最終更新日 2023年8月18日

医療DXとは?

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近年、様々な業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による企業成長が行われています。医療分野においてもその動きは注目されており、今年10月には政府の「医療DX推進本部」が発足され、政府としても医療分野のDXを通じてサービスの効率化や質の向上に取り組むとされています。

しかし、医療機関に従事されている方の中にはDX化と聞くと、

どのような取り組みを行えば良いのか

現状に対してどんな課題が解決へとつながるのか

と具体的なイメージが掴みづらい方もいるでしょう。

そこで本記事では、課題やポイントを踏まえた上で、医療DXのおすすめサービスと実際の導入事例をご紹介いたします。ぜひ医療のDX化をご検討中の方はご参考ください。

医療DXの定義

医療DXの定義として、厚生労働省が以下のように定義しています。

  • 医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること。

【資料1】医療DXについて(第1回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料)より抜粋

以上を踏まえると医療DXとは、病院だけでなく、介護や保険、薬剤においてもデジタル技術を取り入れ、患者の情報を共有することで、より良い医療の提供を目指すことと言えるでしょう。そして、医療は私達の生活に欠かせないものなので、社会全体として進めていく必要があります。

医療DXの現状と課題

医療機関におけるDX化への代表的な課題とその背景について見ていきましょう。

現場スタッフと患者のITリテラシー不足

DX化のためのサービスを導入する際、医療機関のスタッフは専門性が高いためIT機器を扱いなれていないことが多く、IT人材の育成に時間かかってしまう場合があります。加えてDX化のためのサービスを導入したくても、経営層の理解が得られず、ITリテラシーの不足がDX化の推進を妨げてしまうことがあります。

また患者の多くがIT機器に慣れていない高齢者のため、デジタル化された問診や予約など患者とのやり取りに関するDX化を進めることが難しい場合もあります。

導入に対して時間がかかることを理解した上で、むやみにデジタル化を進めるのではなく現状の患者に対してより良い医療を提供するための最適なDX化を検討する必要があります。

医療機関の予算の制限

新しいサービスの導入を検討する際、大きな病院では大掛かりなシステムを導入することになりコストがかかってしまう、というイメージが先行してしまうでしょう。

ですが一部の工程や部門における導入といったスモールスタートから、徐々に全体への導入を検討していくことで、改めて現状に合ったシステムか確認できるので、まずは小さなところからDX化を進めていくと良いです。

また、複雑なシステムの導入の場合大幅なコストがかかってしまいますが、人件費や業務負担の軽減、医療の質の向上などのメリットと合わせて将来的なコスト削減を試算して検討しましょう。

医療従事者の不足

日本全国で少子高齢化が進んでいる影響で医療従事者は年々不足しており、中小病院において休診や閉院が加速しています。

また夜勤や長時間の拘束など医療現場がハードな勤務体制になっているため、結婚や出産により女性の従事者が離職することも多い現状です。

このように、病院自体の経営が難しくなってしまう前に、医療従事者の勤怠管理や業務フローの改善など、医療従事者がより良い環境で働けるように整備することもDX化のポイントとなります。

「医療DX令和ビジョン2030」とは?

「医療DX令和ビジョン2030」とは、医療現場におけるDXを推進するために政府が掲げている施策のことです。具体的な施策内容として、大きく以下3つを掲げています。この3つの達成に「医療DX令和ビジョン2030」の厚生労働省推進チームが取り組んでいます。

全国医療情報プラットフォームの創設

  • ・情報の提供・共有を行う主体について、医療機関・薬局に加え、自治体や介護事業者等への拡大を検討
  • ・共有が可能な情報の範囲について、令和5年1月の電子処方箋情報を皮切りに、電子カルテ情報、予防接種情報等への拡大を検討
  • ・全国医療情報プラットフォームの適切かつ効率的な運用を実現すべく検討

電子カルテ情報の標準化等
  • ・共有できる情報の範囲を広げるため、標準規格を定める情報の範囲を拡大(令和4年度は、透析情報及び一部の感染症発生届について標準規格を定める予定)
  • ・医療機関にて作成される文書のうち行政手続に使用されるものを標準化・デジタル化し、行政手続のワンストップ化の促進を検討
  • ・小規模な医療機関向けに、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の開発を検討

診療報酬改定DX
  • ・診療報酬改定に際し個々のベンダや大病院等が行っているソフトウェア改修等の負担の軽減
  • ・診療報酬改定の施行日当日から、医療機関等の窓口における「患者負担金計算」の正確性の確保
  • ・レセプト請求に係る「事前審査機能」を持たせることにより「診療報酬算定」の正確性の確保
  • ・有事において有用なレセプトデータの活用を可能にする

【参考資料4】第1回医療DX推進本部幹事会(11/24)資料(厚生労働省推進チーム資料)より抜粋・一部改変

医療DXを推進するメリット

新しくDX化システムを検討する際のポイントと、医療機関がDX化を推進することで「どのような課題解決につながるのか」「どのようなことが実現できるのか」というメリットをご紹介します。

医療業務以外の業務の効率化

医療現場における業務効率化には様々なものがあります。例えば、予約システムの導入によって患者の待ち時間の短縮や、予約の電話対応といったスタッフの負担軽減が可能となります。

また、消耗品の在庫管理や廃棄の期限管理などのシステムを導入することで、欠品の不安を無くすだけでなく、医療従事者が本来の業務に集中して取り組めるようになるメリットもあります。

業務を効率化することでスタッフの負担を軽減し、医療業務に集中できる環境を作ることができます。

情報ネットワークの構築

電子カルテの導入などのDX化によって患者の情報をデータ化することで、院内だけでなく別の医療機関に移る際も簡単に共有することができるようになります。

またチャットツールの導入により、院内スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にすることもできます。

日々状況が移り変わる医療現場における情報共有をスムーズにすることで、業務の効率化やコスト削減へとつなぐことができます。

医療におけるBCP(事業継続計画)の強化

BCP(事業継続計画)とは、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧するための方法や手段などをあらかじめ取り決めておく計画のことです。

例えば、患者のカルテを紙媒体で保管していると災害時に紛失してしまう可能性が考えられるため、クラウド上でデータ管理が行える電子カルテに保存しておくことで被害を最小限にすることができます。

患者のプライバシーに関わるため、緊急時でも紛失や盗難がないように管理ができるシステムの導入は必須といえます。

予防医療サービスの浸透

近年、デジタル端末で運動量や体温計測など健康に関する様々な数値を自分自身で管理することで、未然に病気のリスクを減らす予防医療の考え方が浸透してきています。

病気にかかった際も体調管理の記録として参考になるため、医師にとってもより良い医療の提供に役立てることができます。

オンライン診療や在宅診療

昨今では、新型コロナウィルスなどの感染症が疑われる場合にオンライン診療を取り入れる病院が増加しているため、オンラインでの問診や医療相談ができるツールが数多く開発されています。

また、在宅診療向けの持ち運びしやすい電子カルテなどのシステムもあり、医療現場に柔軟な形でDX化が取り入れられるようになっています。

どのような患者に対してより良い医療を届けたいのかによって導入すべきシステムを選定することもポイントと言えます。

医療業界におけるDX事例

医療業界で実際に導入されているおすすめDXサービスを事例とともにご紹介します。

AI搭載のWEB問診システム「ユビーAI問診」

ユビーAI問診webサイト
(出所:ユビーAI問診公式Webサイト)

 

ユビーAI問診は、患者様ごとにAIが最適な質問を自動生成・聴取し、医師は問診結果を電子カルテに1クリックで転記することで業務効率化を実現するAI搭載のWEB問診システムです。
スマホで簡単にWEB問診が行えるため、待ち時間削減と感染リスク対策になり、問診結果は医師用語に変換されて診察前にカルテの8割方が完成します。
導入事例として、問診の質が均質化されるため、看護師の練度に頼ることなく診察をスムーズに行えるようになり、看護師の業務負担の軽減にもつながったという声があります。
また、紹介の患者に対しても紹介状やお薬手帳の内容をスキャンするだけでカルテに取り込める機能があるため、医療事務者の転記ミスの防止やコスト削減になっているようです。

  • 初診の「カルテ記載効率化」
  • 1人あたりの初診問診時間が1/3に
  • With コロナ時代に適した「来院前問診」

訪問診療専用スケジュール管理ソフト「CrossLog」

CrossLogwebサイト
(出所:CrossLog公式Webサイト)

 

CrossLog(クロスログ)は、訪問診療におけるスケジュール管理や移動を楽にするためのスケジュール管理ソフトです。
訪問診療のスケジュールに関する作業を大幅に軽減し、Google Mapsとの連携で訪問診療の移動ルートも管理します。患者や施設のNGスケジュールを事前に登録することにより、スムーズに訪問予定を組むことができます。
導入事例として、一日に何箇所もの訪問先がある場合最適なルート検索ができることによってスムーズに移動ができるようになり、ルート決めの時間も削減できるようになるとのことです。
また、他の先生とのスケジュールを瞬時に共有できるため、次回の訪問スケジュールが合わなくなっても他の方が対応可能か一目で確認することができるようになります。

  • 訪問診療のスケジュールに関する作業を大幅に軽減
  • 診療の際の移動ルート作成がスムーズになる
  • 電子カルテシステムとの連携が可能

介護睡眠見守りシステム「センシングウェーブ」

センシングウェーブwebサイト
(出所:センシングウェーブ公式Webサイト)

 

センシングウェーブは、凸版印刷が提供しているベッドマットレスの下に設置する非接触型センサーです。
利用者の睡眠の深さ、心拍相当数、呼吸相当数、離床・入床などを取得でき、利用者、介護者双方の負担を軽減し、更なるケアサービスの質向上を実現します。
導入事例として、全フロアの情報を1台のパソコンで閲覧可能に設定することで、異常があった際はスタッフ間のスムーズな連携や迅速な処置ができるようになるとのことです。
睡眠の質を段階的に見える化することで、夜間巡視だけでは気づけなかった利用者の状態を把握できるため、日々のケアを最適な形にすることができるようになります。

  • 睡眠の深さや心拍相当数など利用者の状態を一目で把握
  • 大掛かりな工事は必要なく1台からテスト導入
  • クラウド型の運用のためスマホ・PC・タブレットなどで閲覧可能

人事・​産業保健スタッフ向け健康管理システム「Carely」

Carelywebサイト
(出所:Carely公式Webサイト)

 

Carely(ケアリィ)は、企業のすべての健康情報をスッキリ整理する人事・​産業保健スタッフ向けの健康管理システムです。
特殊健康診断や有害業務など管理項目のカスタマイズにも対応しており、過重労働対策やメンタルヘルス対策といったデータ分析に基づいた健康経営施策を提案します。
導入事例として、それまで紙やエクセルで管理していた健康診断、インフルエンザ予防接種、ストレスチェック、産業医面談のやり取りを一元管理することで法令遵守だけでなく健康経営優良法人の認定取得にも繋げられるとのことです。
コロナ禍のリモートワークや多くの拠点を抱えている企業でも、クラウドでのデータ管理により従業員の健康状態を可視化させ、産業医との連携をスムーズにすることができます。

  • 健康管理にかかる作業時間を約4分の1に効率化
  • 従業員に紐づく健康情報を一つの画面に集約
  • 健康経営・ウェルビーイングの実現を支援

自由診療専門の電子カルテ「medicalforce」

medicalforcewebサイト
(出所:medicalforce公式Webサイト)

 

medicalforce(メディカルフォース)は、美容クリニック・自由診療クリニックの業務・経営全てを管理するクラウド型電子カルテです。
電子カルテの機能以外にも予約、会計など様々な機能が連動することで顧客情報を蓄積と可視化することが可能で、来院リマインドやクーポン配信などができるCRM機能もついているため、リピートUP効果も狙えます。
導入事例としては、LINEを使って予約対応ができ、QRコードから事前問診票を記入することもできるため、電話対応が大幅に減って効率的にクリニックの空き状況を埋められるようになるとのことでした。
また自動で在庫残数を減らしてかつ発注や仕入れの管理もまとめてできるので、日々のエクセル管理が不要になります。

  • クリニック向けのマーケティング機能が充実
  • LINEから受け付け可能なWeb予約
  • 患者のスマホで完結する事前問診票は自動でカルテ・来院者情報へ

 

まとめ

本記事では、医療のDX化について代表的な現状の課題やDX化のポイント、取り組み事例をご紹介いたしました。

医療におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、医療の質の向上や業務の効率化を促進することで患者に最適な医療の提供を可能にするために取り組むものです。

改めて自院にどのような課題があるのか、どのような取り組みを行っていきたいのかを整理してから、必要なDX化を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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