PACSとは?
現代の医療は、診断・治療においてデジタル技術の利用が欠かせないものとなりました。その中でも、特に欠かせないものが「PACS」(Picture Archiving and Communication System)と呼ばれる医療用画像管理システムです。
PACSは、医療画像をデジタル形式でキャプチャし、効率的にアーカイブ化、管理、共有するための包括的なシステムです。これにはX線、MRI、CTスキャン、超音波など、さまざまな医療画像が含まれます。従来のフィルムや紙のレポートからデジタルで保存することは、院内の画像共有を簡略化します。
医師や医療スタッフが診療に必要な情報にアクセスしやすくなるため、患者のケアの向上に貢献します。さらに、遠隔地からの診察や近隣病院との連携なども可能にし、医療の均等化を可能にしています。
この記事では、PACSとは何かについて詳しく説明し、また、おすすめの医療用画像管理システム10選をご紹介します。最新のクラウド型PACSもご紹介していますので、自院に適したPACSを検討してみましょう。
PACS普及の背景
PACSが普及した理由として、医療用画像の2年間の保存義務が大きく関係します。医師法で定められた決まりであり、患者の治療方針を決定するのに使ったり、医学研究に活かしたりするため、レントゲンフィルムをはじめとするような画像データの保存には保管スペースの確保が必要とされてきました。
それに加えて、近年のデジタル化やネットワーク化の風潮が追い風となったと言えるでしょう。そういった動きは医療現場にも波及し、コロナ禍での「遠隔画像診断」が増加したことからもわかるように、フィルムからデジタルの医療画像へとニーズが転向しています。
PACSを導入するメリット
情報管理・共有の効率化
PACSを導入することで、情報管理や共有などといった業務効率化が図れることは、まず最大のメリットであると言えます。
PACSは各種モダリティの検査画像に限らず、手書き書類のスキャナ登録からJPEGやPDFデータの保存に対応しているシステムもあります。患者各々に関する文書一式を格納できるので、参照したい画像を瞬時に見つけられるなど、より患者に寄り添った活路が開けます。
また、ネットワークにアクセス可能な環境であれば、PACSはいつでもどこでも画像を共有・確認することができます。そのため、自宅から動きにくい患者宅へ訪問して往診する時や、自宅からの遠隔診断や救命救急の時など、幅広い医療現場での活用が期待できるでしょう。これには、後述するクラウド型のシステムが向いています。
人的ミスの防止
従来の物理的な管理方法では、医療画像の取り間違いや紛失のリスクといった人的ミスをなくすことは難しい課題でした。
診察は、必ずしも患者が来院するものばかりではなく、患者宅まで訪問しての往診もあります。往診のために持ち出した医療用画像のデータが違う患者のものであったり、持ってくるまでに紛失したりしたとあっては、個人情報の漏洩につながりかねません。
そうした課題を解決したという点も、PACSのメリットであると言えるでしょう。PACSは、保管する際に患者のIDと画像とを紐づけするので、人的ミスの防止が実現します。
クラウド型とオンプレミス型
電子カルテのシステムと同じく、PACSにもクラウド型とオンプレミス型、大きく2つのシステムがあります。
クラウド型のPACSは、院内にネットワークを構築する必要がないため、初期費用などの導入コストを削減でき、中小規模の病院やクリニックでの導入ハードルが下がる「省スペース・低コスト」と言えます。ただし、システム利用料やセキュリティ面のリスクに対する懸念が残りますので、その点は留意しておきましょう。
オンプレミス型のPACSは、院内に構築したネットワークを主流として画像データを保管するので、セキュリティ面のリスクやシステム利用料への懸念は比較的ありません。しかしながら、クラウド型とは反対に導入に際して高い費用がかかりますので、ある程度規模の大きい病院やクリニックである必要があるでしょう。
医療用画像の保存義務期間は2年間であることを考えると、膨大になっていくデータ容量を管理し続けやすいクラウド型のPACSがトレンドになっていくと考えられますが、まずは自院に合ったソフトがどういったものか、確認しましょう。
おすすめのPACS(クラウド型)
クラウドPACS NOBORI
クラウドPACS NOBORIは、PSP株式会社が提供している、画像などの医療情報を安全に保管・利用できるクラウドサービスです。東日本と西日本の二拠点で多重保管するデータセンターは、有人受付・生体認証とカードシステム認証によって監視されており、病院・医療機関からお預かりした検査画像をはじめとする大容量の医療情報を安全に保管します。
また、“NOBORI-CUBE”と呼ばれる、コンパクトな専用アプライアンスサーバをレンタル機器として提供することで、院内サーバー不要、初期投資ゼロを実現しています。
- 東日本/西日本2拠点のデータセンターで多重管理
- 院内サーバー不要・初期投資ゼロ
- 遠隔読影やモバイルでの情報参照、施設間連携にも対応
SonicDICOM PACS Cloud
SonicDICOM PACS Cloudは、フジデノロ株式会社が提供しているクラウド版医用画像管理システムです。複数のプランからサブスク型で利用することができるため、学会・研究会などでの短期間の利用から長期的な利用まで対応しています。
国内外問わず簡単に画像を共有することができ、閲覧制御機能や公開機能によって閲覧制限を掛けることができます。ゲストアカウント設定も可能なため、院外の人との情報共有もスムーズに行うことができます。
- 1分で誰でも簡単にPACSを構築
- いつでも最新バージョンを利用可能
- タイムリーに画像のやり取りができる
WATARU
WATARUは株式会社スリーゼットが提供しているクラウド型PACSです。高性能のサーバに適した、画像を最速で保存・処理・表示する汎用性ビューワを搭載しています。専用ビューアなしにマンモグラフィもデフォルトで設定可能です。
医療画像以外の形式も柔軟に取り込むことができ、マニュアル登録やスキャナ登録など多数のソフトに対応しています。施設やドクターが必要とする機能・ソフトだけを厳選して、自院に最適な形に開発した実績が多数あります。
- クラウドとは思えない閲覧スピードを実現
- クリニックの開発実績が多数
- 電子カルテ等端末あいのりOK
LOOKREC
LOOKRECは、株式会社エムネスが提供しているクラウド型DICOMデータプラットフォームです。従来のPACSの様にデータの保管ができるだけでなく、遠隔読影の依頼・レポート受診、予防×治療の連携、病病連携など、検査画像を介したコミュニケーションを円滑にし、質の高い医療の提供をサポートします。
現役放射線科医が放射線科医のために開発したシステムで、自分好みの読影工程に即した動作が行えるようカスタマイズも可能で、素早い読影を後押しします。
- 専用設備・システム更新不要
- 各社電子カルテとの連携実績あり
- いつでもどこでも読影業務を圧倒的に早く正確に
Climis
Climisは、ジェイマックシステムが提供している新規開業医向けサブスク型クラウドPACSサービスです。画像枚数が増えてもデータ容量無制限かつ追加料金ナシで利用することができます。保守・サポートも月額利用料に含まれているためコストを気にせず安心して利用できます。
PDIメディア作成/読込機能搭載で他院への画像の受け渡しも簡単に行うことができます。
- Webブラウザベースだからどこでも使用可能
- 月額変動ナシ&データ容量無制限
- オンライン配信機能により近隣病院との連携を実現
おすすめのPACS(オンプレミス型)
NEOVISTA I-PACS SX2
NEOVISTA I-PACS SX2は、コニカミノルタが提供している医用画像管理システムです。鎖骨/肋骨の減弱像の可視化や経時差分処理、クラウド保管サービスなど豊富なオプション機能があり、画像診断・管理業務を強力にサポートします。
画像展開は比較読影、フリーレイアウト、時系列での一覧表示など患者ごとの検査結果を様々な構成で俯瞰して表示することができます。また、付箋を貼るように管理し抽出することができるブックマーク機能を搭載しており、学会への登録、至急・緊急といった読影依頼、データ出力依頼など幅広い使い方ができます。
- マトリックスビューアー機能による快適な読影環境
- 豊富なオプション機能でカスタマイズ
- 独自の画像処理機能で画像診断・管理業務をサポート
Xronos
Xronosは医療用画像管理システムです。CR,CT,MRIといった画像撮影装置(モダリティ)で撮影した画像データをネットワークを通じて受信し、保管・管理します。
DICOMインポートの導入により、他施設から提供されたCD/DVDメディア等からのDICOM画像の取込が可能。DICOMゲートウェイを使用すれば、非DICOM画像も取込可能です。MWMサーバを導入すれば、上位システム(HIS)からのオーダー管理を行うことができます。
- 参照用Webビューワは無償提供!クラウド版での提供も可能
- 電子カルテからボタンひとつで画像表示
- iPadなどのタブレット端末からも閲覧可能
Caps-Web
Caps-Webは、総合クリニック~中小規模病院向けのオンプレミス型PACSです。どなたも快適に利用できるように診療科や役割に応じてボタンの大きさや配置をカスタマイズできる機能が標準搭載されています。また、医師。看護師、事務などロールを設定し、閲覧・編集・削除などの権限を制御することができます。
他院からの持込み画像は、患者IDを入力するだけで簡単登録。またJPEGなどの汎用画像や、問診票・紹介状などの紙媒体も、それぞれDICOM変換して登録できます。
- ユーザー毎に画面表示カスタマイズ
- 安全な運用のためのアクセス制御
- 検査種ごとに表示方法を設定
Claio
Claioは、株式会社ファインデックスが提供している医療用データマネジメントシステムです。紙カルテレス化を行う過程で取りこぼされやすい画像やデータを効率よく管理し、さらに価値ある利用を行う為の機能を搭載しています。検査機器1台の画像データから大規模病院にある各診療科の自科検査、各種紙データなどのトータルファイリングまで、幅広く利用できます。
S-Video、コンポジットのアナログ映像機器の静止画・動画の取り込みはもちろん、HDMI、DVIで出力する映像機器の静止画・動画の取り込みも行えます。
- 各診療科の検査結果やレポート、動画等を一元管理
- 非DICOMモダリティでもデータ化可能
- 動画のHi-Vision信号キャプチャにも対応
SYNAPSE
SYNAPSEは、富士フィルムが提供している検査情報管理システムです。JPEG/PDFなどの汎用ファイルの管理やデータメディア書き込み、検査情報ポータルなどの機能を集約した複合型システムとなっています。
院内の診療端末上で、患者の検査画像をはじめ、デジカメで撮影した画像やスキャンした文書などを時系列で表示・閲覧できます。また、汎用ファイルを簡単な操作で取り込み可能です。
- 作成済レポートの既読管理が可能
- 放射線レポート・内視鏡レポートの作成に対応
- 患者紹介時の画像データ取り込み・書き込みもサポート
まとめ
本記事では、医療用画像管理システム(PACS)についてメリットやクラウド型・オンプレ型について解説したのち、おすすめのPACSをご紹介いたしました。
医療用画像管理システム(PACS)では、患者のあらゆる情報を一元管理します。そのため保管できる画像容量はもちろん、画像をスムーズに閲覧・比較できるのかによって業務の効率性が変わってきます。クラウド型の場合は無料トライアルができるシステムもあるため、自院の診療科や規模、コスト面など複合的な視点から検討しましょう。
医療用画像管理システム(PACS)の導入ならスマートゲートのBPO!
「スマートゲートのBPO」では、高解像度のスキャンによるカルテ・レントゲンの電子化サービスを提供しています。
DICOM形式にも対応しておりますので、スキャンしたデータをそのまま医療用画像管理システム(PACS)に取り込むことが可能です。
院外に持ち出せない患者の紙カルテのスキャンもスキャナー機材を出張で持ち込むことで、外部漏洩の心配がないように対応いたします。
その他にも手書きのカルテや患者の名簿・リストなど、様々な紙媒体のテキストデータ化も承ります。電子カルテへの移行に伴う電子化についてお困りであれば、お気軽にご相談ください。