DXとは?
数年前からさまざまな業界で促進されているDXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、進化したデジタル技術によって、ビジネスに限らない人々の生活をより良いものへと変革するためにしばしば提唱されています。
経済産業省の定義では、顧客や社会のニーズに合わせて製品やサービス、ビジネスモデルを変革するためにデジタル技術を活用して、業務やプロセス、ひいてはそれぞれの企業文化や風土そのものを刷新することによる競争上での優位性の確立を指しており、DX推進への強い呼びかけは今も続いています。
この記事では出版業界に注目して、現状におけるDX化推進に対する課題や、実際に出版業界で進められているDX化の事例をご紹介しています。出版DXをご検討中の方は、ぜひご参考ください。
目次
出版業界の現状
近年、コロナ禍の影響もあり進行したペーパーレス化などによりDXの成果が少しずつ表れてきています。しかしながら、未だ出版業界では原稿の赤入れを手書きで行っていたり、掲載するコンテンツの選定作業をすべて紙の企画書で進めていたりなど、アナログでの作業が多く、それぞれ出版企業の規模によってその推進度合いは異なります。
また、製品やサービスのDX化に成功したとしても、経産省が定めるような意味での変革に至るのは難しく、DX化推進を牽引することができるのは、やはり大手の出版社に多い傾向があり、アナログ作業から脱却できている企業は全体として少ないと言えるでしょう。
出版業界のDX化
未だアナログ的作業が多く残る出版業界で、DX化を実現するためには
- ①アナログの価値を損ねないデジタルの活用
- ②作業工程へのデジタル化導入
- ③一部書類のデジタル化による本来業務の円滑化
DX化を推進するからといって、アナログ的な部分を完全になくす必要はありません。顧客や社会全体から出版業界に対する価値を感じられるように、デジタル的なアプローチを図ることが有効だと言えるでしょう。
また、デジタル化させた方が良い部分と、むしろアナログで残した方が良い部分とを見極めることが重要です。特に稟議書や契約書などといった書類は電子化することで、別の作業や編集工程などといった書類整理の類ではない、本来の出版社の業務により専念することができるようになります。
実際のDX事例
出版業界でのDX化を推進している企業の実例を取り上げながら、出版DXに必要なポイントをご紹介します。
株式会社 早川書房
早川書房は、2023年6月に創刊する新レーベル「ハヤカワ新書」創刊ラインナップ全5作品について、「NFT電子書籍付き新書」を提供しました。紙書籍に本編と同内容のNFT化された電子書籍が付いて販売されるのは世界初の事例で、「FanTop」というサービスを通じたユーザー間の二次流通(売買)が可能となっています。
二次流通(売買)の需要を高めるには、紙書籍では未収録のテキストやアナザーエンディング、設定集などの限定内容を用いて読書体験の豊かさを追求することが必要です。これにより紙の本と電子書籍双方のニーズを活性化させ、進化したデジタル技術によって生きた知識を届け、人々の生活をより良いものへと変革するというDX化を図っています。
また、読者間での二次流通(売買)が成立するたびに権利者への収益・印税の分配が行われるため、セカンドハンドの転売等により実現できなかった継続的な作品の応援につながるシステムが確立され、出版業界に新しい風を吹かせる要因となることが期待できるとのことです。
KADOKAWAグループ
KADOKAWAグループは、①ユーザー基盤 ②組織コミュニケーション基盤 ③製造・物流基盤 の3つの改革を通じ、経済産業省の定義するところのようなDX化を目指しています。そのため、DX化推進にあたって「従業員=顧客」と捉えることが最大のポイントでした。
会社や従業員の一部のみで実現するDX化では、KADOKAWAグループの目指すDX化は実現しません。その対策として、従業員全員に対して勉強会を開催したり、導入したてのツールの使用をサポートするサービスメニューを用意したりすることで、デジタル化を進めた方が良い部分と、敢えてアナログのままにした方が良い部分を明確にしました。
その結果、社内のDX化を定着させることに成功させました。これからは「アナログの価値をデジタルで支える」ことを実現していきたいとのことです。
株式会社 ディスカヴァー・トゥエンティワン
ディスカヴァー・トゥエンティワンは、出版社でありながら、顧客の抱える課題を明確にし、その解決まで寄り添うフォローアップを実現するフルサポートサービスを提供しています。ビジネス書や自己啓発書などでの豊富な実績を活かして、さまざまなジャンルやメディアを通じたトレンドのチェックに基づいた提案が強みと言えます。
中でも重視されているのは、単なる書籍の制作・販売ではなく、動画やWEBサイトの制作などといった「ブックブランディング」サービスです。著者自身の想いや課題を表面化し、SNSやウェビナーなどのあらゆる手段の提案と実行で、出版とデジタル化社会の有効的な融合を実現しているとのことです。
業務効率化を支援するDXツール
出版業界で実際に導入されている業務の効率化を支援するDXツールをご紹介します。
出版業界の非効率を変える「Booklink」- デジタルチラシ配信サービス
BookLinkは、出版業界の主な営業先である書店とのチラシのやり取りや受発注を効率化・最適化できるデジタルチラシ配信サービスを提供しています。
出版社の商習慣となっている販促チラシ作成ですが、出版社のPRしたい商品情報と、書店が受けとりたい情報が一致していないために、活用されずに紙の山と化してしまっていることが多々あるでしょう。
そこで、本サービスを導入することにより、出版社が工夫を凝らして作った販促チラシをPDFのままアップロードするだけで書店側に共有できるようになり、紙代や仕分け作業などのコストを削減することができるようになります。細かなタグ付けを利用した検索機能の利用も可能で、情報収集を円滑化します。
また、出版社と書店双方のコスト削減を実現するだけでなく、同プラットフォームから他社のチラシも閲覧できるため、自社のチラシ制作のクオリティ向上にも役立てることができるとのことです。
- 販促チラシを書店で最大限に活用させる
- 簡単操作と便利な検索機能で作業の円滑化
- 他社のチラシと比較して、自社のチラシ制作のクオリティを向上
販売からAI分析まで対応する「CONTEO」- クラウド型出版社システム
CONTEOは、さまざまなコンテンツと多様な販路の一元管理から売上のAI分析に至るまで、幅広く業務の効率化をサポートします。
出版社の業務である紙(電子)書籍などをはじめとする商材やその売上の管理や、どこで何が売れているのかという調査・分析などには、人的・金銭的コストが多くかかってしまいます。商材の種類が多い出版社ほどその管理データのコストは大きく膨れ上がっているでしょう。
本サービスを導入することで、関連書籍のほかにもライセンスや雑貨・文具・玩具等の物販といった商材およびその売上の一元管理ができるようになり、コンテンツや販売チャネル毎の収支管理も実現します。
別々の商材の売上データをそのまま管理システムに統合させることもでき、インターネット環境であればどこからでも利用できる利便性から、作業効率のアップとコスト削減が期待できるとのことです。
- コンテンツと販路の一元管理からAI分析で業務を効率化
- コンテンツや販売チャネル毎の収支管理も実現
- 管理システムとの統合で効率アップとコスト削減
業務改善とブランドマネジメントを実現「CIERTO」- デジタルアセットマネジメントシステム
CIERTOは、画像・動画、クリエイティブデータ、提案資料などのあらゆるファイルを一元管理し、関係者によるオンライン共有、マーケティング・営業活動を促進することができるデジタルアセット管理(DAM)ソフトです。
媒体・コンテンツの制作には多くの人の手によりプロジェクトが進行するため、フローが複雑化してしまいがちです。そこで、本ソフトを導入すると、データ管理を一元化し、検索機能やプレビュー機能、データ変換などコンテンツ制作を円滑にする様々な機能を活用することで、制作工程を一部削減することができます。
導入事例として、カタログギフトの企画から販売までを手がける株式会社マイプレシャスでは、本サービスを導入後、何千枚もの紙の企画書を用いた選定作業の見直しを行い、選定に必要な商品群をオンライン上で収集し、必要に応じてPDFを出力をしながら業務を進めることで効率化と品質向上を実現できたとのことです。
- 広報や宣伝などの企業の事業活動におけるブランドマネジメントを実現
- 紙と電子の両媒体が交錯するコンテンツ制作環境の業務も改善
- WebやSNSでの配信業務をサポートし、マネタイズを推進
出版社の方向け!スマートゲートのデジタル化支援サービス
弊社では、出版社のDX化をサポートする以下のようなデジタル化支援サービスを提供しております。
デジタルブック
デジタルブックは、アプリケーションのダウンロードや会員登録などは不要で、URLへのアクセスのみでお手軽な閲覧を可能にするため、SNS等を利用したWEBマーケットで書籍を拡散して、試し読みなどにご活用いただけます。
また、書籍を制作した際にご協力いただいた関係者の方々への献本も、デジタルブックという形で進呈することができます。辞典や参考書などで新たな版が出ても、内容があまり変わらないのに場所をとるなどの理由から電子での受け取りを希望する方のご要望を沿うことができます。
スキャン代行
社内文書や請求書をはじめ、出版社の方が特に多く所有する本・書籍のスキャンおよびデジタル化を実現いたします。スキャンしたデータは名刺や書類、契約書などの管理ツールとの併用によって、情報管理の円滑化を期待できます。
毎月・毎週の定期的なスキャンのご依頼も承っておりますので、定期的に発生する請求書や申込書があるお客様にご活用いただけます。
また、スキャン作業だけでなく、スキャン後のデータ入力や溶解の作業にも対応しておりますので、人的コストおよび保管スペースやその管理費用の大幅な削減を実現いたします。
データ入力代行
紙媒体しかない絶版本をテキストデータ化することで、新版や電子書籍などを制作して新たな販売機会を創出することができるようになります。赤入れした原稿や手書き原稿などの紙媒体もデータ化でき、手書きの字と活字の文字情報を行き来しながらの入力・確認により増えていた工数を大幅に削減できます。
その他にも、弊社では、申込書付きはがきをはじめ、手書きの自由記述回答のあるアンケートなどのさまざまな形式のデータ入力に対応しております。はがきによるキャンペーンやアンケートを実施すると、膨大な量の紙媒体が届き、結果の分析や応募者のリストアップをするためのデータ入力に多くの時間を要するでしょう。効率的なスピーディさが求められる場合にお役立ていただけます。