最終更新日 2024年3月21日

建設DXとは?

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近年、様々な業界においてDX化への動きが活発になっており、建設業においても注目が集まっています。各企業ではAIやIoTなどの先端技術を活用することによって少子高齢化による人材不足や業務効率化、属人的だった技術の継承などの問題解決に役立てています。

建設業でのDX化は国の取り組みも進められており、国土交通省では「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組であるi-Construction(アイ・コンストラクション)を進めています。

本記事では、建設業における現状と課題、DX化のメリット、実際に企業がどのようなDXへの取り組みを行っているのかご紹介いたします。

建設業界の現状と課題

建設業におけるDX化への現状と課題について見ていきましょう。

少子高齢化と人材不足

2017年6月に国土交通省が第6回建設産業政策会議で取りまとめた資料「建設産業の現状と課題」では、若年入職者の確保・育成が喫緊の課題として取り上げられています。

日本全国で進んでいる少子高齢化ですが、建設業においては作業の危険性や過酷な肉体労働、長時間勤務といった労働環境の問題もあり、慢性的な労務難に陥っています。

参照:https://www.mlit.go.jp/common/001149561.pdf

低い生産性

建設業では未だアナログでの作業が多く、図面や報告書を紙媒体で保管している場合があり、作業者は事務所と建設現場を往復することになります。

また、現場ごとに異なる環境になるため作業の標準化が難しく、手作業での工程が生まれてしまう傾向にあります。

働き方改革

2024年から建設業では、働き方改革関連法における残業の上限規制が適用されることになり、各企業は働き方を見直す必要が迫られています。

恒常的な長時間労働の体質を改善するためには、業務の効率化を進めていく必要があります。

参照:https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/000812940.pdf

建設DXを導入するメリット

建設業がDX化を推進することで「どのような課題解決につながるのか」「どのようなことが実現できるのか」をご紹介します。

業務の効率化

ペーパーレス化やオンラインでの申請・承認などの業務フローの見直しを行っていくことでコスト削減となり、業務の効率化につながります。

また遠隔での作業による作業員の安全性の確保や、システムによる労務管理を行うことで労働環境の改善も実現できます。

省人化の推進

前述した少子高齢化により、建設業において若手の従業員が不足している状況にあります。ですがAIやロボットを活用することで肉体的負担や単純な作業の削減を行うことができます。

少ない人数で業務を回せることができるようになるため、生産性の向上につながります。

スムーズな技術継承

今後多くの高齢の従業員が離職していくことが予想されるため、技術の継承をしていく必要があります。

DX化を取り入れたノウハウの共有を行うことで属人的だった専門知識も若手の従業員に継承され、従業員全体の技術力の向上が期待でき、事業の持続性も高めることができます。

建設DXで活用されているデジタル技術

現在、建設DXを進める上で活用されているデジタル技術として、以下のようなものが挙げられます。

建設業の中でも、設計図の作成や建設現場で活用する技術、現場で働く作業員のワークフロー管理など、デジタル技術を活用できる場面は様々です。

実際の現場における問題や課題点を整理して、どのような技術を取り入れることで業務が効率化できるか、より良い労働環境に改善できるのか検討しましょう。

ドローン

建設事業におけるドローンは、空撮や測量などの用途で利用されます。ドローンを活用することで、従来の手法では困難だった高所や難易度の高い場所の観測・測量を簡単に行うことができます。

また、ドローンを用いて建設現場の監視や点検を行うことで、作業員の安全管理を行うことができます。施工中の安全上の問題を事前に発見することができ、事故防止につながります。

ICT(情報通信技術)

建設事業におけるICT(情報通信技術)とは、IT(情報技術)や通信技術を活用して、建設プロセスの各段階で情報を共有し、業務を効率化することを指します。

インターネットを介して膨大な量のデータを高速に処理することができるようになるため、複数の拠点でデータを共有したりデータ解析を行うことができます。建設プロセスの効率化や品質向上、作業者の安全性向上など、様々なメリットを得ることができます。

BIM/CIM

建設事業におけるBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)とは、建築物の設計、施工、保守・管理において、3Dモデリング技術を用いて情報を一元管理する技術を指します。建物の3Dモデルを作成することで、建物の構造や性能をシミュレーションすることができるため、設計段階で詳細な情報を共有し、設計の質を向上させることができます。

また、設備や機器の位置や管理情報など建物全体を統合的に管理することもできます。BIM/CIMを活用することで、建設プロセス全体を統合的に管理し、効率化・品質向上を図ることができます。

AI

建設事業におけるAI(人工知能)は、機械学習やディープラーニング、自然言語処理などの技術を利用して、建設プロセスの自動化や効率化を図ることができます。作業時間や工数の見積もり、工程管理、作業計画の作成などの業務を自動化することにより、工程の遅れやミスの発生を防ぎ、効率的な工事進行が可能になります。

またAIを活用することで、安全監視カメラやセンサーのデータを収集し、異常を検知することができます。これにより、危険な状況の早期発見や事故防止に役立ちます。

建設DXを進める4つの手順

建設業でDX化を推進する大まかな手順をご紹介します。

課題を分析する

まずは自社の課題を見つけましょう。現場で働く従業員や事務作業を行う従業員、営業を行う従業員など建設に関わる作業は幅広く複雑です。

各業務において、実際にどのような課題があるのか洗い出してみましょう。

目的を明確にする

DX化を推進していく上での目的を定めましょう。

目的のないDXの導入は、効果を実感できない、社内の理解を得られず中々進められないなどにより、DX化の失敗を招いてしまいます。

導入するDXツールを選定する

自社の課題解決とDX化の目的を達成できるDXツールを選定しましょう。

現場の従業員が扱えるかトライアルで実際に操作を行ったり、カスタマーサポートがきちんと整えられているのか確認したりするなどなど、導入から運用の動きを想定して選びましょう。

効果検証を行う

実際の現場でDVツールを活用して目的を達成できているのか効果を検証する必要があります。達成できていない場合や思っていた効果が発揮できていない場合は改善を行いましょう。

導入した直後はツールをうまく扱いきれていないことがあるため、現場の従業員へのレクチャーや質問対応、マニュアルの作成などを行う必要があります。

実際の建設DXの事例

業務効率化クラウドサービス
「kintone」-中島工業株式会社

kintonewebサイト
(出所:kintone公式Webサイト)

 

Kintoneは、顧客管理や問い合わせ管理から、社内外のアンケート、FAQシステムなど幅広い機能が搭載されているクラウド基盤サービスです。用途別に様々な使い方ができ、必要な機能だけをオプションとして付け加えてそれぞれの企業にあったシステム作りができます。
中島工業株式会社は大阪の本社を中心に、関東圏から九州まで全国14か所に拠点を持った超分散型組織で、長年培ってきた施工技術やノウハウがあるものの各拠点間に埋もれてしまい活用が難しい状況でした。
しかし、kintoneを導入することで社内外の状況がリアルタイムに見え、スピーディーな情報共有により、質の良い提案を生み出すことが可能になりました。
また、労働時間が長い従業員が可視化されるため働き方改革にも活用でき、業務時間が短くなってもしっかり利益を増やしていけるような仕組みづくりを進めています。

  • それぞれの企業にあったシステム作りが可能
  • 社内外の状況がリアルタイムで確認できる
  • 従業員の労務管理により働き方改革にも活用

BIM/CIM
「AEC Collection」–大日コンサルタント

AEC Collectionwebサイト
(出所:AEC Collection公式Webサイト)

 

AEC Collectionは、クラウドベースの共通データ環境でサポートされる一連のBIMツールやCADツールを設計者、エンジニア、施工従事者に提供し、初期段階から施工までプロジェクトの実施を促進します。施工性とプロジェクトの調整を最大化し、現場での予測可能性が向上します。
大日コンサルタントでは、業務の高度化や災害の頻発による業務量の増加、専門技術者の定年退職といった様々な問題を抱えていました。
これらの課題を解決するため全社でBIM/CIM に取り組んだ結果、わずか3年足らずでBIM/CIMを設計業務や災害対応のベースとして活用し、さらに業務の一部を自動化できるまでになりました。
独自にBIM/CIM活用のテクニックや設計ノウハウの共有システムの開発、 3Dモデル作成を自動化ツールの開発などBIM/CIMをベースとした自社に適したシステム開発も行っています。

  • 設計から施工までのワークフローを統合
  • 業務の一部の自動化、省力化を実現
  • 長年培った技術をより広い分野で活用

画像処理+AI技術の360°カメラ
「THETA 360.biz」-東急建設株式会社

ROOVⓇwebサイト
(出所:ROOVⓇ公式Webサイト)

 

THETA 360.bizは、RICOH THETAで撮影した360°画像を使って、誰でも簡単に360°コンテンツを制作・公開することができるクラウドサービスです。アプリで撮影した360°画像をそのまま展開することも、PCでよりリッチに編集することも可能です。
東急建設株式会社は打ち合わせ中に写真では見えない部分を確認したくても撮影にかかる手間や工事の進行により該当箇所が確認できなくなることが多々あり、できる限り時間をかけずにより情報量の多く得るため360°カメラを導入しました。
これにより、タブレットを用いて事前に作成したバーチャルツアーを取引先に共有することで、実際に現場にいるかのように細部を確認でき、打ち合わせがスムーズに進むようになりました。
また、現場の状況を本社や支店などと共有する必要がある時も、これまでは現場へ直接行っていたところを、オンラインの会議とバーチャルツアーの共有で完結できることも増え、時間短縮や人件費の削減につながることが見込まれています。

  • 誰でも簡単に360°画像を撮影・編集・共有
  • オンライン上で現場の状況確認が完結
  • 手間をかけずに共有できる情報量が増え、打ち合わせがスムーズになる

AI手法をとり入れた自動運転建設生産システム
「A4CSEL®」-鹿島建設株式会社

A4CSEL®webサイト
(出所:A4CSEL®公式Webサイト)

 

A4CSEL®は、鹿島建設株式会社が開発した建設機械の自動運転を核とした次世代建設生産システムで、自動化改造した汎用建設機械に、最適化された計画に基づいた作業データを送信することで、建設機械自身が自律的に自動で作業を行うものです。
少ない人数で多くの自動化建設機械を同時に稼働させることをコンセプトとした、世界初の建設生産システムです。
鹿島建設株式会社では、全国3か所の現場で稼働するA4CSELの自動化建設機械を、東京都港区の本社に設けた集中管制室から一括管制することに成功し、合計20台の自動化施工と遠隔操作をわずか4名の管制員で工事を完了させました。
熟練技能者の操作データを基にAI手法をとり入れ、作業条件、状況に応じた自動運転技術を実現させており、近い将来では作業者のテレワークや遠隔での月面作業などを実現できるかもしれません。

  • 少ない人数で工事作業ができるため生産性が向上
  • 熟練技能者の操作データをAIに取り込み個人の能力差を減らす
  • 人が立ち入ることができない災害復旧工事にも適用可能

建物を一括管理するデジタル化プラットフォーム
「DX-Core」-清水建設

DX-Corewebサイト
(出所:DX-Core公式Webサイト)

 

DX-Coreは、建物内の設備やIoTデバイス、各種アプリケーションを容易に連携・制御できる建物運用デジタル化プラットフォーム機能を備えた建物OS(オペレーティングシステム)です。
今まで、建物運用に関わる設備機器やアプリケーションはメーカーの違いや仕様、プログラムが異なることが相互連携を困難にしていました。
清水建設はこの問題を解決するためにDX-Coreを開発し、建物をパソコン本体のようにすることで、さまざまな設備機器などのデバイスを“プラグアンドプレイ”の感覚で増設・連動できるようにしました。
DX-Coreを介することによって、設備更新や新たな設備の導入時に連携の仕組みごとつくり変える必要がないため、容易にバージョンアップを図ることができ、常に最新のビル機能を維持することができます。

  • メーカーの垣根を超え、建物内のシステムを容易に連携・管理
  • 利用者に混雑状況や各種インフォメーションなど、建物の最新情報を簡単に提供
  • 新規サービスの導入やサービス機能のアップデートを迅速かつ柔軟に実施

まとめ

本記事では、建設業のDX化について現状と課題やDX化のメリット、取り組み事例をご紹介いたしました。

建設業では少子高齢化による技術継承問題や慢性的な労務難など長年労働環境に課題がありますが、DX化を取り入れたことにより改善している企業の事例が多数見られました。

労働環境を整備することで業務を効率化でき、生産性の向上が見込めるため、抜本的な働き方改革が企業の利益につながるでしょう。

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