自治体DXとは?
自治体DXとは、自治体がAIなどの最新のテクノロジーを利用して業務の見直しや効率化を促し、住民に最適なサービスを提供するために行う改革です。
企業が自社の利益の最大化ためにDX化を行うのに対して、自治体DXはデジタル庁発足や新型コロナの対応など、社会の動きに合わせて住民へのより良いサービス提供のために活用するという違いがあります。
しかし、自治体でDX化を検討されている方の中には、
「自治体へのDX化は何からはじめればいいのか」
「既にDX化を取り入れている自治体は、どのような取り組みをしているのか」
といった疑問を抱えている方がいると思います。
そこで本記事では、自治体DXの課題や推進する際のポイント、取り組み事例をご紹介いたします。ぜひ、自治体DXを進める際にご参考ください。
自治体DXの課題
自治体におけるDX化への代表的な課題とその背景について見ていきましょう。
デジタル人材の不足
自治体の職員は特定のスキルよりも幅広い業務をこなす能力と円滑なコミュニケーション能力が求められているため、専門性の高いデジタル人材がいないことが多いです。
また同じ業務フローを着実に処理していく業務内容のためITスキルを身につける機会が少なく、DX化の導入を検討していても実行に踏み切れる人材がいない場合もあります。
国民の理解とコミュニケーション
自治体がサービス提供を行う住民は高齢者から子育て世代、若年層まであらゆる世代が含まれており、ITに対する理解や経験は様々です。
特に少子高齢化が進んでいる自治体においては、デジタル技術を取り入れるには住民の理解が得られるか、円滑に活用できるかといった不安が生まれ、DX化が中々進まない現状にあります。
アナログ文化の組織
住民の個人情報や国の機密に関わる業務のため、行政ではアナログ文化が強く根付いており、2022年でも霞が関では8割がFAXを利用しているという調査結果が出ているほどです。
また、指導者のITリテラシーの不足により、現場では業務効率化のために新しいシステムを取り入れたくても、権限がなく現状を維持することになってしまっていることもあります。
自治体DX推進計画とは
自治体DX推進計画とは、デジタル社会の構築に向けた取り組みを全自治体において進めていくため、総務省が自治体が取り組むべき事項と内容を具体化し、それに伴って各省庁の支援策を取りまとめたものです。
その中で「自治体DXの重点取組事項」として、自治体が特に取り組むべき事項を以下6つに分類して掲げています。
- ・自治体の情報システムの標準化・共通化
- ・マイナンバーカードの普及促進
- ・自治体の行政手続のオンライン化
- ・自治体のAI・RPAの利用推進
- ・テレワークの推進
- ・セキュリティ対策の徹底
自治体DXの6つの重点取組事項
自治体DXの重点取組事項のそれぞれの項目について詳細をご紹介します。
自治体の情報システムの標準化・共通化
今までは各府省や地方公共団体はそれぞれが業務処理に必要なシステムを構築していましたが、政府は2025年度を目安に新システム「Gov-Cloud」に統一することで行政手続きのオンライン化とデータの円滑なやり取りを実現させるとしています。
Gov-Cloudとは共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境であり、早期に整備し、運用を開始することとしています。
各情報システムを構築することで、情報システムの迅速な構築及び柔軟な拡張、最新のセキュリティ対策、技術革新対応力や可用性の向上、コストの大幅低減といった効果が期待されています。
マイナンバーカードの普及促進
マイナンバーカードでは、本人確認のための身分証明書として利用できるほか、自治体サービス、e-Tax等の電子証明書を利用した電子申請等、様々なサービスが利用できます。
現在、マイナンバーカードを利用することで、コンビニエンスストアでは住民票の写しや印鑑登録証明書等の市区町村が発行する証明書を取得できるようになっており、国民の生活の利便性を向上させています。
他にも、オンラインでの取引が増えたことによる電子証明の本人確認のニーズに対応するため、マイナンバーカードは現在も様々な活用方法が出来るように改善され続けています。
自治体の行政手続のオンライン化
行政の手続きには紙媒体でしか受け付けていないことがあるため、行政手続きにオンライン化を取り入れていくことで仕事や育児などにより手続きが難しかった方にも利便性の向上をはかることができます。
また、オンライン上で手続きが完了するため、それまで対面で業務をしていた職員の業務負担が軽減され、地方行政の業務の効率化に繋がります。
自治体のAI・RPAの利用推進
AI・RPAの利用には、ソフトウェアロボットによる書類業務やチャットボットによる問い合わせ対応などが挙げられます。
総務省が作成した「自治体におけるRPA導入ガイドブック」では、AI・RPA等のICT活用といった攻めの分野へ集中して人的・財政的資源を投資できるような環境を作ることが不可欠であるとして、自治体へのAI・RPAの導入を促しています。
少子高齢化による労動者不足が課題となっている現状において、効率的に業務が行える環境作りを実現させるでしょう。
テレワークの推進
民間企業において、新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークの普及はかなり広がりましたが、対面での窓口業務や住民の個人情報を扱う機密性から自治体におけるテレワークはハードルが高い現状です。
一方、オンライン化を進めることでテレワークが拡大した市町村もあり、佐賀県庁では大雪などの災害時でも在宅やモバイルからのテレワークにより業務継続に成功したという事例があります。
職員の安全を確保した上で住民へのサービス提供を維持するため、DX化によるテレワークの拡大をしていく必要があると言えます。
セキュリティ対策の徹底
行政手続きのオンライン化やテレワークなどを進めると同時に、自治体ではセキュリティ対策の強化に努めています。
総務省では「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を示し、自治体における情報セキュリティの基準を定めています。
自治体のDX化を推進する際のポイント
新しくDX化システムを検討する際のポイントと、自治体がDX化を推進することで「どのような課題解決につながるのか」「どのようなことが実現できるのか」をご紹介します。
デジタル人材の育成・強化
学校教育にも高度なIT技術が取り入れられている現状の中で、行政にスキルのあるデジタル人材を増やすことは急務であると言えます。
そのためには、IT技術の専門家の積極的な採用やIT技術を学ぶ育成の場を設けるなど、体制づくりが必要になります。
幅広い年代に使いやすいシステムを導入する
自治体がDX化を進めるには、国民とコミュニケーションを取りながら、どの世代にも扱える形でDX化を進めていく必要があります。
ITリテラシーの理解度が様々な国民がスムーズに自治体のサービスが受けられるように、サポート体制や扱いやすいUI設計を整えましょう。
現状の課題を整理する
DX化を進めるにはまず初めに、現場で働く職員の声に耳を傾けて、現状の課題に合ったDX化を取り入れましょう。
どの業務においてどのような問題が起きているのか整理することで、自治体それぞれに適したDX化を促進でき、より良い職場環境の構築にもつながっていきます。
自治体DXの取り組み事例
埼玉県
-AIチャットボット-
「NEC 自動応答」
AIチャットボット「NEC 自動応答」は、NEC独自のAI技術(テキスト含意認識技術)を活用し、自然文の多様な表現を認識し、問合せに高精度・高速に回答します。
よくある簡単な問い合わせは自動応答で回答し、問合せ対応者は複雑な問い合わせに集中することにより、応対の高品質化を実現します。
埼玉県では、埼玉県医師会や埼玉県看護協会の協力の下、県民の安全・安心と救急医療の最適化を目指し、さらなる利便性向上と相談件数急増の対応に向け、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」を活用した「埼玉県AI救急相談」の開発しました。
これにより、従来の電話による救急相談に加え、AIを活用したチャットボットでの自動応答サービスを提供し、いつでも気軽に利用できるチャット形式での相談を可能にしています。
- 自然文の多様な表現を認識し問合せに高精度・高速に回答
- 救急相談の自動化によりいつでも手軽に相談できる
- 同時に複数人へ対応できるため回線のつながりにくさも解消
神奈川県綾瀬市
-多言語音声翻訳アプリ-
「VoiceBiz®(ボイスビズ)」
多言語音声翻訳アプリ「VoiceBiz®(ボイスビズ)」は、急増する訪日外国人や在留外国人との多言語コミュニケーションが、手持ちのスマホで円滑になる、トッパンの法人向け音声翻訳アプリです。
専門用語や定型文を、データベースに追加登録することで、より使いやすい音声翻訳サービスに、カスタマイズすることができます。
神奈川県綾瀬市では、小学校5校、中学校1校にVoiceBiz®(ボイスビズ)を導入し、国際教室における学習指導や保護者とのコミュニケーミュニケーションなどに活用しています。
外国籍の生徒が多い小学校にて、緊急の連絡事項や学校でよく使う定型文も事前に登録しておくことで円滑に連絡ができるようになっています。
- アプリにIDを入力するだけですぐに使える
- 外国籍の住民の多様な母語への対応が可能
- 固有名詞、定型文を登録してより環境に合った翻訳ができる
東京都港区
-庶務事務システム-
「IPKNOWLEDGE 庶務事務システム」
庶務事務システム「IPKNOWLEDGE 庶務事務システム」は、休暇や時間外勤務などの就業情報の管理と、扶養や通勤など手当の届出、年末調整における保険料控除などの申告、および研修の受講申込みなど、幅広い申請届出業務をサポートします。
他にも画面から簡単に申請業務を追加できる「汎用申請機能」により導入後も容易に業務を拡張でき、本人申請のワークフローにより申請届出業務のスピードアップと事務コスト削減が期待できます。
東京都港区教育委員会では、今まで紙で処理していた区立小中学校の教職員の勤怠管理をシステム化し、各教職員による適切な出退勤時の打刻により正確な在校時間の把握が容易になりました。
教員だけでなく、事務、栄養、管理職などそれぞれ勤務に対する規定が異なっているため勤怠管理が複雑になっていましたが、自動化することで職員の意識改革や働き方の見直しを行うための基盤としての活用もできるようになっているようです。
- さまざまな規定で勤務する職員の労働時間管理に対応
- 紙ベースだった管理職や事務職員の業務負担が軽減
- システムに履歴が残るため事前申請、事後実施が徹底されるように
神奈川県
-文書管理システム-
「e-自治体 文書管理システム」
文書管理システム「e-自治体 文書管理システム」は、公文書管理法に準拠し、行政文書の管理に特化したパッケージ製品です。
文書の電子化を推進し、作成から起案・決裁・施行・保存・廃棄まで、文書のライフサイクル全体を効率的に管理できます。また、電子決裁により業務の効率化と紙文書の電子化を促進します。
神奈川県庁では、2011年の東日本大震災での公文書の毀損・滅失の経験から紙から電子文書へ移行に取り組み、全庁規模で利用できる電子決裁・文書管理システムとして活用を開始しました。
紙文書の削減による工数・コストの削減や廃棄まで含めたライフサイクルの効率改善を促進し、テレワークや外出先での業務対応がしやすくなっているようです。
- 文書管理+電子決裁機能をオールインワンで提供
- 文書の電子化・改ざん防⽌にも効果的
- 文書保管にともなう工数・コストの削減や業務効率改善に
埼玉県深谷市
-地域通貨プラットフォームサービス-
「chiica」
地域通貨プラットフォームサービス「chiica」は、地域で貯まる・使える「地域通貨」のプラットフォームサービスです。
地域内で貯めたくなる、使いたくなる通貨とすることで、地域内での循環を通じた経済の活性化を実現します。
埼玉県深谷市では、chiicaを活用したオリジナルの地域通貨「negi(ネギー)」によるポイント事業を次々に展開しています。プレミアム商品券事業を地域通貨でサービス提供を行うことで、紙の商品券と比べて発行に係る事務経費を大幅に削減できています。
また、市民の生活習慣改善のきっかけ作りを目的とした健康マイレージ事業でのイベント参加の景品にしたり、新型コロナウイルスに伴う経済対策事業の飲食店の利用促進と支援を目的に地域通貨での還元を行ったりと、地域の活性化事業に活用しています。
- ボランティアや健康イベントへの参加などでポイント発行
- スマホアプリだけでなくカードタイプも利用可能
- 地域経済の活性化や観光促進などの自治体の事業に活用
まとめ
本記事では、自治体のDX化について代表的な現状の課題やDX化のポイント、取り組み事例をご紹介いたしました。
自治体でのDXは窓口業務での住民とのコミュニケーションや個人情報の管理など、オンライン化しづらい業務が多いため取り組みが進んでいない現状です。
しかし、業務の効率化や職員の労務環境の整備、住民へのより良いサービス提供のため、そして地域経済の活性化にもつながるため、自治体でのDX化は促進していくべき重要な課題と言えるでしょう。
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