教育DXとは?
医療や自治体、不動産をはじめとした業界でDX化が推進されていますが、教育においても文部科学省が主導となって積極的に取り入れている動きがあります。
企業におけるDX化とは、デジタル技術を活用して製品やサービス、業務そのものを変革し利益の拡大を進めるものですが、教育におけるDX化は業務の効率化だけでなく、未来の担う子どもたちへのより良い教育の提供やデジタル人材の育成といった意味も含まれています。
本記事では教育DXの課題と背景、メリットを踏まえた上で実際にDX化を活用している事例をご紹介いたします。
教育DXの社会的な背景
教育現場におけるDX化の背景と課題について見ていきましょう。
文部科学省が教育のデジタル化を推進している
文部科学省は文部科学省におけるデジタル化推進プラン(案)【概要】にて、「教育におけるデジタル化の推進」について以下4つの柱を提示しました。
- ・GIGAスクール構想による一人一台端末の活用をはじめとした学校教育の充実
- ・大学におけるデジタル活用の推進
- ・生涯学習・社会教育におけるデジタル化の推進
- ・教育データの利活用によるEBPMの推進
このように、政府が主導となってデジタル技術を活用した教育の充実化を図るとともに、デジタルネイティブな人材の育成・確保が進められています。
リモート授業の需要が高まっている
新型コロナウイルスの感染拡大により、ほとんどの企業ではテレワークやオンライン会議といったデジタル技術を積極的に取り入れ、オンラインで普段通り仕事ができる環境作りを行ってきました。
教育現場においても、同様にオンラインでの授業や試験の需要が高まっており、これを実現させるためには、児童生徒1人1台端末の整備が必要となります。
文部科学省は2021年5月に各学校のICT環境整備の進捗状況として、96.5%の自治体において整備が完了していると報告しており、環境整備は順調に進められています。
ICT教育とは?
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、インターネットを通じた産業やサービスなどといった、直訳の「情報通信技術」そのもの以外のことも指して使用されることがあります。
実際の教育現場で導入されているようなICTには、パソコンやプロジェクタ、タブレットなどがハードウェア、無線LANやeラーニング、デジタル教科書などがソフトウェアとして例に挙げられます。
そして、これらの技術を教育現場で導入する背景には、従来のアナログ教育のデジタル化を通じて、①問題解決などに際して情報技術を有効活用するための知識と技能を身につけ、②情報リテラシーやセキュリティへの理解度を高めようとする、文部科学省の動きがあります。
教育DXの課題
インフラの整備
教育現場でDXを推進する際、インターネット環境の構築や生徒一人ひとりへのタブレットの配布、教職員へのセキュリティ対策など、環境の整備が必要になります。
また、家庭での学習も想定して、生徒の家庭内のインターネット環境についても事前に把握、整備する必要があります。
学校などの教育機関では、生徒に一律でDX化を進める必要があるため、インフラの整備をきちんと計画を立てて行いましょう。
指導者側のデジタル技術への知識と理解が必要
教育現場にDX化を取り入れるためには、まず指導者がデジタル技術を活用する意識と理解が必要となります。文部科学省の取り組みでも、学校へITに理解が深い支援員の配置を促す動きがあります。
指導者側がデジタル技術に慣れていない場合、導入したばかりの段階ではコストや手間が増えてしまい、うまく活用できない場面が生まれるでしょう。
短期的な成果を求めるのではなく、より良い教育の提供のための長期的な取り組みであることを理解した上で、積極的にデジタル技術を活用する姿勢が必要です。
アフターGIGAスクール構想とは?
GIGAスクール構想の「GIGA」とは「Global and Innovation Gateway for All」の略語で、GIGAスクール構想は「令和時代のスタンダードとしての学校ICT環境を整備し、全ての子供1人1人に最もふさわしい教育」を与えることを掲げた文部科学省の取り組みのことを指します。
2019年から国公私立の小・中・特支等の児童生徒1人に1台のデジタル端末の整備を進めており、2021年には全国の小中学校の約9割に端末が付与されたことにより、小中学校における端末の整備は完了の兆しが見えてきました。高校においても、端末の導入が進められており、今やGIGAスクール構想は、徐々に「アフター」の様相を呈しています。
しかしながら、導入が進めば進むほど、それに伴った課題も散見されるようになります。具体的には、①セキュリティ対策に関する問題と②端末に係る新たな費用の発生の問題が挙げられます。
これからも教育データを活用していく上で、データをオンプレミス型からクラウド型で保存・保管することは一種の有効手段であるとはいえ、未だセキュリティ対策に対する懸念が残る、というのが1つ目の課題であると言えます。将来的なICTの活用を視野に入れたクラウド活用のサポート体制構築が期待されるでしょう。
また、ICT教育の実現に伴い、デジタル端末の故障や買い替えなどにかかる費用負担への不安も残ります。環境整備や導入に際しては政府の地方財政措置がありましたが、今後も必要とされる継続的な財政面の援助が懸念されています。
教育DXを導入するメリット
教育DXを推進することで「どのような課題解決につながるのか」「どのようなことが実現できるのか」をご紹介します。
個別指導を最適化できる
これまでの集団教育では、理解度が遅れている生徒には後でフォローを行ったり、早く理解できる生徒には繰り返し復習させたりすることで、全体の進行度を整える必要がありました。
しかしAIによるデジタルドリルなどの学習教材を取り入れると、常に生徒の理解度を計測できるようになり、生徒一人ひとりに合わせた設問作りやフォローを行うことができるようになります。
また、タブレット端末で試験を行うことにより、これまで生徒一人ひとりの結果や全体の平均点など手作業で算出していたことが自動で算出されるようになり細かいデータ分析が可能となります。
遠隔で教育が受けられる
教育DXを推進することでオンラインでの授業や試験が受けられるようになるため、欠席や不登校などで学校に来れない生徒にも学習支援ができます。
また新型コロナウィルスのような感染症の流行や災害時にも生徒に継続して教育を提供でき、教育機会の損失を減らすことができます。
事務作業を軽減できる
これまで教員が手作業で行ってきた事務手続きや出欠表、試験の採点などあらゆる業務をデジタル技術を取り入れることで、業務の効率化を実現できます。
教員の長時間労働が社会問題として度々取り上げられている現状において、業務の負担を減らすことは急務といえるでしょう。
各教育段階における教育DXの活用方法
小中学校における教育DXと高等学校における教育DXでは、教育段階の違いにより活用方法が異なります。その違いについて以下にてご紹介します。
小中学校における教育DX
小中学校の生徒は基本的な学習基盤を築く段階であり、生徒の好奇心や学習意欲を刺激することが重要となるため、視覚的な教材やゲーム性のあるアクティビティなどを活用することで、基本的な概念の理解と興味喚起を促進することができるでしょう。
また、タブレットなどの電子機器に積極的に触れる機会を設け、その活用方法を生徒に指導することでデジタルリテラシーの育成にも繋がります。
高等学校における教育DX
高等学校の生徒は、より専門的な教科や進路に特化した学習を行う必要があります。また、教師は高度な学習指導に加えて、進路相談やプロジェクト指導など、生徒の将来への準備を支援する必要があります。
高等学校における教育DXでは、教材としての活用だけでなく、煩雑になりがちな生徒の試験結果や課題提出の進捗、志望校などの情報を一括管理できるツールとしても活用できます。これにより、教師は生徒一人ひとりの志望校やキャリアデザインに適した指導をスムーズに行えるようになります。
教育DXの活用事例
学校生活を支える教育プラットフォーム
「Classi」-佐賀県立致遠館中学校・高等学校
Classiは、コミュニケーション、探究学習、学習動画、日々の学習記録などを通じて、「先生方の授業・生徒指導」「生徒の学び・成長」をサポートするオールインワンのプラットフォームです。
佐賀県立致遠館中学校・高等学校は、生徒の学力向上を目的に2015年にClassiを導入し、5年間の試行錯誤を経て、今では学校生活に無くてはならないICTツールとなっています。
その利用方法は授業内でのWebテスト利用、学習記録を利用した毎日の学習時間調査、生徒カルテを利用した進路指導、紙のプリント配布からPDF配信への移行、臨時休校時の双方向コミュニケーション、校内グループを利用した教員の日報デジタル化など、学校生活全般に及んでいます。
これにより、データに基づいた学習指導や生徒の志望校や学科が変わったタイミングでの面談の実施など、細やかな生徒のフォローが可能になっています。
- 生徒の学びに関するあらゆる記録を一元管理
- リアルタイムの集計とオンラインでの学び合いを実現
- マルチデバイス対応のアプリでいつでも手軽に発信・確認
使えば使うほど最適化するAI型教材
「Qubena」-戸田市教育委員会
Qubenaは、教科書・教材・ソフトウェア、校務支援システムなどサービスの枠を越えた連携による、学習者を中心としたデータ利活用の環境を実現する学習eポータル+AI型教材ツールです。
戸田市教育委員会では、授業の冒頭での前回までの復習や、授業の内容を基にした問題演習、授業の終末での定着度の確認等でQubenaを使用しています。
いろいろな種類の問題を学習の定着度に応じて出題でき、紙ではできないスピード感で通常よりも多くの問題数に取り組めるため、生徒に最適な学習を提供できるだけでなく教員の作業時間もかなり軽減されています。
また、教員が生徒の学習状況を把握してこれまで以上に声掛けができるようにもなりました。
- 教科書・教材・ソフトウェアとのアカウント・名簿連携、学習データ連携
- 校務支援システムとのアカウント・名簿連携や評価連携
- データ利活用サービスとの学習データ連携
塾・予備校向けAIを用いた学習システム
「atama+」-TERAKOYA
atama+は、全国の主要な塾に採用されている、生徒の理解度、弱点、ミスの傾向などを全て把握し、数百万時間以上の学習データをもとに生徒専用カリキュラムを作るAIを用いた学習システムです。
四国地方大手の学習塾である寺小屋グループが運営するTERAKOYAでは、生徒一人ひとりの得意・苦手に寄り添ったより良い学びを提供するための新たな取り組みとしてatama+を導入しました。
atama+の英単語学習機能は、「英語と日本語の意味を対応させる」「単語の大まかな形を理解する」「スペルを覚える」という3段階で学習が進むため、生徒にとっては段階を踏んで学習できること、講師にとっては生徒の学習状況を確認できることが、学力層を問わず幅広い生徒の効果的な学びにつながると考えられ、実際に生徒の成績がアップしたとのことです。
- 人間では不可能な分析力をAIが実現
- 生徒の理解度に合わせた学習レベルの最適化
- 基礎から応用、入試対策まですべてカバー
塾専用コミュニケーション&業務管理システム
「Comiru」-鷗州塾
Comiruは、保護者との関係を構築する「コミュニケーション機能」と、塾の運営を効率的にする「業務改善機能」の2つのアプローチで先生を支援する塾専用コミュニケーション&業務管理システムです。
鷗州塾では各教室での取り組みや教え方のノウハウ、生徒の成績などさまざまなデータを計測する取り組みを行っていましたが、手作業での業務はかなりの負担になっていました。
Comiruを導入することでデータを一括管理でき、多角的に分析ができるようになるため、業務の効率化だけでなく生徒へのフォローや保護者とのコミュニケーション、スマートな塾経営を実現させています。
- 専用アプリやLINE連携で保護者との信頼関係を築ける
- データの一元管理で先生の業務負担を軽減
- 経営に直結する生徒獲得機能で塾のマーケティングの生産性を向上
教育環境を強化するプロダクト「Google for Education」-徳島県上坂町立高志小学校
Google for Educationは、料金がかからずに、学習の指導案やアプリ、ゲームなどの教室での学習体験を発展させられるようなオンラインツールを提供している、教師と生徒双方に向けたオンラインリソースです。
徳島県の上坂町立高志小学校では、GIGAスクール構想に先駆けてICT活用の意義に着目し、文部科学省の呼びかけよりも早い2020年から町の教育委員会と話し合い、Google for Educationの導入および実践を続けてきました。
学校を休んでも機能の一つ「Google Meet」を通じて家庭から教室につながったり、地域の人々と交流したりすることができるため、コロナ禍というピンチ自体をそのままチャンスに変えることができたとのことです。
- 教育者向けのツールも用意されているので、教育に集中できる環境が整えられる
- 教育機関の全システムを一元管理できて、最小限の手間で多様なツールを提供できる
- いつでもどこでもアクセス可能なバーチャル教室の活用で授業の管理が簡素化
まとめ
本記事では、教育のDX化についての課題やDX化のメリット、活用事例をご紹介いたしました。
教育におけるDX化は指導者側の業務効率を上げるだけでなく、AIの活用による生徒への最適な教育カリキュラムの構築や保護者との円滑なコミュニケーションを実現させます。
文部科学省が主導となって情報を活用できるデジタル人材の育成を図っている現代において、教育にDXを取り入れることは必須といえるでしょう。
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