最終更新日 2024年3月21日

観光DXとは?

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観光業界においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念が広まっており、その中でも特に注目されているのが「観光DX」です。観光DXは、デジタル技術を活用することで、観光の体験価値を向上させる取り組みのことを指し、現在観光庁が推進しています

観光DXは観光地や旅行会社にとってもメリットのある取り組みです。事実、旅行会社の取り組みの一つに、デジタル上での予約チケット販売システムの活用が挙げられます。システムを導入すれば、大幅に人的労力を削減でき、効率的な営業活動が可能になります。観光地においてもオンラインで様々な観光コンテンツを提供し、地域の魅力を広く発信できれば新たな観光客を誘引することが期待できます。

また、デジタル化によりデータ解析が容易になるため、顧客の行動や嗜好を把握でき、顧客ごとのニーズに合わせたサービスの提供ができることも観光DXの大きな特徴です。観光業界は、旅行会社と観光地、観光客など多くの要素がかかわります。デジタル化により、お互いのコミュニケーションが円滑となり、リアルタイムでの情報共有が可能になれば、旅行体験は今よりも便利で充実したものとなるでしょう。

本記事では、観光DXとは何か、現状や注意点から今後の目標などまで解説いたします。観光DXについて理解を深めたい方は、ぜひご一読ください。

観光庁が推進する観光DX

デジタル庁の発足に伴い、観光庁では2021年度予算で8億円が計上され、「DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」という取り組みが採択されました。

観光庁は、現在に至るまで、観光業界におけるデジタル技術の活用や新たなサービスの開発を進めています。ここでは、観光庁が進めるDXについて、目的や具体的な取り組みについて解説します。

観光DXの目的

観光庁は観光DX推進により、旅行者により豊かな旅行体験を提供し、観光地の経済を活性化させることを目指しています。現在、新型コロナ感染症の行動制限の影響を受け、観光需要が低下している地域では再活性化が重要な課題です。そのため、観光庁は地方公共団体や観光地域づくり法人と連携し、観光産業の強化や観光地経営の高度化を推進しています。

観光産業は特に、ロボットやAIに頼った業務に移行することは難しく、依然として人の力が不可欠な仕事であると言えます。加えて、旅行形態や消費者ニーズの変化にも対応していく必要があるという課題もあるため、こうした問題の解決には、それぞれの観光地域の実情を踏まえたDX化を考慮することが重要なカギとなります。

観光庁によるDX推進の取り組み事例

観光庁は、令和4年にデジタルツールやサービスが利用できる環境が整ったことに加え、デジタル技術を活用する意欲も高まっていることから、「観光DX推進のあり方に関する検討会」を設置しました。この検討会では、デジタル技術の活用による課題解決に向けた検討を行っています。

令和5年度からは、先進事例を参考に旅行者の利便性向上や周遊促進、観光産業の生産性向上、観光地経営の高度化といった3つの観点について取り組んでいます。

その中で、観光・地域経済活性化実証事業として、以下の7つの事業を採択しました。

  • ・「Yamagata Open Travel Consortium」:データ標準化と広域連携による販売システムの実証
  • ・「福井県観光DX推進マーケティングデータコンソーシアム」:観光実態把握とマーケティングモデルケース造成事業
  • ・「箱根温泉DX推進コンソーシアム」:快適な周遊、旅を満喫する箱根温泉まるごとDX事業
  • ・「海の京都観光DX推進協議会」:海の京都データ交換所プロジェクト
  • ・「しまなみ海道DXコンソーシアム」:レンタサイクルを基軸としたしまなみ海道活性化事業
  • ・「隠岐OTA推進共同事業体」:隠岐4島の予約DX・CRM統合による経済循環プロジェクト
  • ・「日本観光振興デジタルプラットフォーム推進コンソーシアム」:「日本観光振興デジタルプラットフォーム」構築事業

引用元:令和5年度「事業者間・地域間におけるデータ連携等を通じた観光・地域経済活性化実証事業」における採択事業の公表 | 2023年 | 報道発表 | 報道・会見

これらの事業は、観光地・観光産業全体の収益の向上と拡大の実現に向けた、観光DXの先進モデル創出のために採択されました。観光庁は引き続き地域の連携や持続可能な経済社会の実現に取り組んでいくとしています。

観光DXの注意点

観光DXの推進には、関係者が協力し合いながら長期的なビジョンを実現していくことが大切です。ここでは、そうした観光DXに関する注意点について詳しく解説します。。

IT人材の不足

観光DXに取り組む際には、IT人材の不足に注意しなければなりません。DX化には、情報システムやデータ分析、ウェブサイト・アプリケーション開発など、高度なITスキルを持った人材が必要とされます。

しかし、IT人材の需要は多岐にわたり、供給が追いつかない状況が続いています。特に、観光業界への関心や理解が深いIT人材は限られており、人材が不足しているのが現状です。そのため、IT人材の育成・採用・定着を目的とした対策が求められています。

教育機関や専門学校との連携を強化し、将来的なIT人材の供給を確保することや、IT人材が業界に魅力を感じ、長期間働き続けられる環境づくりも不可欠です。また、業界内での情報交換やセミナー・研修の開催などを通じて、観光DXに関する知識やノウハウを共有し、経験豊かな人材を育成していくことが求められます。

ただし、IT人材の確保育成には多くのコストがかかりますので、人材不足の解消には、外部の専門企業やコンサルティングファームとの協力関係を構築することも効果的です。観光DXの実現は一つの自治体や企業だけでは困難な場合があります。多岐にわたる知識と経験を持つ専門企業に相談し、共同で取り組むことも視野に入れましょう。

ターゲットに適したサービス提供

観光DXの成功には、ターゲットに適したサービス提供が欠かせません。観光DXを推進する目的の一つは、観光客の体験価値を向上させることだからです。そのためには、ターゲット層の特性やニーズを正確に把握することが重要です。

観光DXでは個別化されたサービスの提供を目指しますが、実現するには、対象となる顧客層の嗜好や要望を的確に把握する必要があります。マーケット調査や顧客アンケート、データ分析などを通じて、ターゲット層の特性を明確化しましょう。

さらに、観光DXでは顧客体験の向上を目指す一環として、ユーザーフレンドリーなインターフェースや使いやすいアプリケーションの提供も重要です。デジタル技術を利用していても、使いにくいサービスでは本末転倒となってしまいます。フィードバックを通して利用者の声に耳を傾け、常に改善を行いましょう。

観光業界におけるDXの導入事例

沖縄県
-沖縄県発のメタバース-
「バーチャル沖縄」

バーチャル沖縄webサイト
(出所:バーチャル沖縄公式Webサイト)

 

沖縄県発のメタバース「バーチャル沖縄」は、新型コロナウイルスの影響により国内外の旅行客が激減したことによる危機感を感じた沖縄県で動き出した、沖縄発のメタバース開発プロジェクトです。
沖縄県では、このバーチャル沖縄を通じて沖縄ならではの三線の演奏を披露したり、沖縄版のラジオ体操やちんすこうの餌やり、360度バーチャル空間でのオーシャンビューの体験を用意したりすることで、メタバースでも臨場感のあふれる観光体験を提供することに成功しました。
他にも、国際通りにある有名店とのコラボレーションを試みることで、公式オンラインショップを通じた商品の購入も可能にしました。コロナウイルスの緩和が進んだ2023年12月においても、バーチャルイベント「OKINAWA JAPAN VIRTUAL FES」は開催され、今後も国際通り以外の観光地の制作にも着手していく予定とのことです。

  • PC・VRデバイスからはもちろん、スマートフォンからの参加も可能
  • 現在再建中の世界遺産「首里城」の散策もメタバースで体験できる
  • ビーチエリアや居酒屋エリアではバーチャル上の仲間と交流が楽しめる

岐阜県高山市・飛騨市・白川村
-飛騨地域限定の電子地域通貨-
「さるぼぼコイン」

さるぼぼコインwebサイト
(出所:さるぼぼコイン公式Webサイト)

 

飛騨地域限定の電子地域通貨「さるぼぼコイン」は、加盟店での支払いに使ったり、ユーザー間での送金を可能にしたりする、飛騨地域限定の電子通貨アプリです。
岐阜県高山市・飛騨市・白川村では、2次元コードを読み取ってキャッシュレスでお支払いを済ませることや、いつでもどこでもできるさるぼぼコインのチャージでポイントをゲットすることもできます。なお、セブン銀行ATMでチャージする場合にはポイントがつかないので、注意してください。
さるぼぼコインを導入する予定の企業に対しても優しく、導入にかかる費用や月額の使用料金は0円です。①ひだしんの口座を開設し、②さるぼぼコインの加盟店申込書に必要事項を記入のうえ、③ひだしん職員からの説明を受け初期設定をおこなう、のスリーステップで加盟店になることができます。

  • App StoreまたはGoogle Playからアプリをダウンロードできる
  • お会計の時だけでなく、市役所での納税にも利用可能
  • 飛騨信用組合<ひだしん>で口座を持っていると利用限度額や有効期限が変わる

京都府京都市
-混雑の見える化-
「京都観光快適度マップ」

京都観光快適度マップwebサイト
(出所:京都観光快適度マップ公式Webサイト)

 

混雑の見える化「京都観光快適度マップ」は、ビッグデータをもとに予測した、京都市のエリア別になった混雑情報を発信しており、ライブカメラやおすすめ記事を参考にした安心・安全な京都観光を楽しむためのマップです。
京都府京都市では、年間を通して多くの観光客や修学旅行生でにぎわったり、桜や紅葉・イベント開催などの季節に合わせたりして、街中の混雑状況がすぐに変化します。マップを見ることで、1時間毎の天気や、5段階の評価でリアルタイムの観光スポット付近の快適度を表示することができます。
また、地図に表記のない店名もおすすめスポット・モデルという形で紹介してくれるので、空いてる時間にサクっとチェックができて、事前予約が必要な体験やイベント以外の観光でも楽しみが続きます。

  • ライブカメラ映像から混雑具合をリアルタイムで確認ができるので、信憑性が高い
  • 桜や紅葉のシーズンには開花・色づきに関する情報までカバー
  • 家族旅行やひとり旅、女子旅などの様々なモデルに合わせたおすすめコースの用意がある

日本スタンプラリー協会
-デジタルスタンプラリーシステム-
「プラチナラリー」

プラチナラリーwebサイト
(出所:プラチナラリー公式Webサイト)

 

デジタルスタンプラリーシステム「プラチナラリー」は、「スタンプラリーで未来の思い出を作ろう!」をスローガンに、日本各地で開催されているスタンプラリーを盛り上げるべく活動している日本スタンプラリー協会による、スタンプラリーを簡単に作成、開催するためのデジタルスタンプラリーシステムです。
実際に、自治体や観光事業者、商店街等に利用していただき、地域活性化および町おこしを実現させるモバイルスタンプラリーを開催できるよう、利用できるユーザー数は無制限で、大規模なイベントにも強い仕様となっているとのことです。
Google翻訳やDeepL、Microsoft Translatorにより11ヶ国語に対応しているので、インバウンド需要における多言語対応も可能となっています。わかりやすいマップ展開と周辺地域の情報が充実し、ユーザーの回遊率や利用データに基づいた分析機能も搭載されるなど、圧倒的な支援基盤ができています。

  • アプリのインストール不要のWEBブラウザで完結できる
  • QRコード、GPS、クイズ、NFCタッチの4つの方式からスタンプ獲得方法を選べる
  • 景品の提供方式やスタンプのデザイン方式も設定可能

まとめ

本記事では、観光DXの特徴を現状や注意点、今後の目標などにわたって解説いたしました。

観光DXは、デジタル技術の活用による効率化や情報の提供だけでなく、観光業界と地域の連携を通じた持続可能な観光の推進を目指す取り組みです。デジタル技術の活用を通じて、旅行者のニーズや要望を的確に把握し、サービスや情報提供を行うことで、より便利で満足度の高い旅行体験が実現できるようになります。

また、観光業界と地域の連携強化によって地元の観光資源を最大限に活かし、地域経済の活性化や雇用創出にも寄与することが期待されています。観光DXは、観光産業の成長や地域の発展に大きく貢献するでしょう。

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